J. S. バッハ作曲の結婚式用カンタータ “Gott ist unsre Zuversicht” の終楽章 “So wandelt froh auf Gottes Wegen” です。
『371のコラール』(Edition Breitkopf 8610) の第62番,『389のコラール』(Edition Breitkopf 3765) の第370番で,いずれも “Wer nur den lieben Gott lässt walten” として載っています。
歌詞
対訳・逐語訳
テキストは新バッハ全集にあるものです。
So1 wandelt1 froh1 auf1 Gottes1 Wegen1,
そういうわけで,喜んで(安心して)神の道を歩みなさい,
und2 was3 ihr1 tut1, das4 tut1 getreu1!
そしてあなたたちがしていることを忠実に行いなさい。
Verdienet1 eures1 Gottes1 Segen1,
あなたたちの神の祝福を稼ぎなさい,
denn5 der1 ist6 alle1 Morgen1 neu1:
それは毎朝新しいものだから。
denn5 welcher7 seine1 Zuversicht1
auf1 Gott1 setzt1, den8 verläßt9 er1 nicht1.
というのも,信頼を神に置く者を,彼(=神)は見捨てることがないのだから。
出所
Georg Neumark ゲオルク・ノイマルク(1621-1681)作詞・作曲の聖歌 “Wer nur den lieben Gott lässt walten” の最終節(第7節)がもとになっていますが,本来のテキストはけっこう異なっており,次の通りです(つづりは今のドイツ語に合わせて直してあります)。
Sing, bet und geh auf Gottes Wegen,
verricht das Deine nur getreu
und trau des Himmels reichem Segen,
so wird er bei dir werden neu.
Denn welcher seine Zuversicht
auf Gott setzt, den verlässt er nicht.
一致しているのは最後の2行だけですね。はじめの4行を訳すと,
歌え,祈れ,行け神の道を,
あなたのことをただ忠実に行え(or:整えよ),
そして天の豊かな祝福を信頼せよ,
そうしたらそれ(=天の豊かな祝福)はあなたのもとで新たになるだろう。
となります。
バッハ作品にとって重要な当時の聖歌集をいくつか見てみましたが10,この節はどれも “Sing, bet und geh…” のほうのテキストになっていました。というわけで,今回のコラールでテキストが大きく異なっているのは,もともとそういう別バージョンがあったためではないと考えられます。ではどうしてこうなったのかですが,このコラールが含まれるカンタータBWV 197が結婚式のためのカンタータであるため特別にこうしたのだと思います。
余談
2行目の「あなたたちがしていることを忠実に行いなさい」または「あなたのことをただ忠実に行え」という言葉と似たような内容をもつラテン語の格言(?)はこちらです。
楽曲分析
書くよりずっと分かりやすいだろうと思いましたので,動画にしました。
まとめ
- まず合唱のバスと通奏低音とを比較すること。
- 経過音などの形で8分音符がよく用いられている。
- 属七であっても,第7音は自由には使えない。順次進行で到達するなり予備するなりするのが原則(そうでない場合には何かしら理由付けがある。今後実際に出てきたら解説します)。
- 各行の終止に当たっては導音の限定進行よりも終止和音の充実(第5音も省略しない)が優先される。
- 縦に捉えるばかりの分析では,本質を見誤る場合がある。
- いわゆる「Iの第2転回形→V」における「Iの第2転回形」は繋留の結果生じているものであるから,バスの4度上の音は予備を必要とする。
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