何かを学習してゆく上での最重要事項:復習法について

学習法

 このブログにはこれから,さまざまな分野の学習のしかたについての記事も多く書いてゆくと思いますが,そうすると頻繁に言及しないわけにゆかないのが,復習のことです。そして,復習においては方法が大切です。しかしそのたびにその説明をするのでは,読んでくださる方にとっても私にとっても煩わしいことになるでしょうから,あらかじめここに書いてしまうことにします。


【要点】
 何かを覚えてゆく上で,復習ほど大切なものはない。そして復習はタイミングが命であり,復習タイミングが最適になるようにした優れた復習法としてspaced rehearsalスペースト・リハーサル(スペースド・リハーサル)というものがある。この方法を実践するには,Ankiというソフトを用いるのが最も簡単である。だが,Ankiあるいはspaced rehearsalそのものが肌に合わない人もいると思われるので,最後に代替手段も提案する。


復習の重要性

 大学入試や資格試験に向けての学習であれ,外国語の習得であれ,何らかの学習においては「理解する」こととともに「覚える」ことが必ずついて回ります。しかし,深い印象を受けたり強烈な関心を持って取り組んだりする場合を除き,人間は基本的に何でもすぐ忘れてしまうものです。

 それにもかかわらず何かを記憶にとどめたいと思ったら,繰り返し学習する,すなわち復習するしかありません。繰り返し同じ情報をインプットすることにより,脳が次第に「これは必要な情報なのだな」と認識し,もともと短期記憶でしかなかったものを長期記憶化していってくれるのです。

 ちなみに大学受験において,予備校で授業を取りすぎて復習がおろそかになった結果学習が中途半端になり,本番での得点にも結びつかない,というのはよく聞く失敗パターンです。それに対して,復習を大切にして丁寧に学習を積み上げてゆけば,比較的少ないインプット量でもよい結果に結びつきやすいものです。

「~周する」という言い方は復習法が洗練されていない証拠

 繰り返し学習すること自体の重要性はわりとよく知られているようで,たとえばインターネットでいろいろな人の受験勉強の記録や参考書・問題集のレビューなどを読んでみますと,「この問題集を3周した」「1回やって終わりではだめだ,4周くらいしなさい」というような言葉をよく見かけます。

 しかし,この「~周する」という考え方自体に問題があります。もちろん,「3周」なり「4周」なりすることでともかく復習をしていること自体はよいことであり,1回通しただけで終わりにしてしまうよりはるかに効果が大きいのは確かです。が,「~周する」ということは,ひと通り終わらせるまでは初めのほうに戻ってこないということであり,そうすると最初の学習と2回目の学習との間隔が空いてしまいます。これだと,最初の学習でせっかく一度覚えたものをだいぶ忘れてしまってから2回目の学習にかかることになる場合が多く,効率が悪いのです。

 「いや,忘れてしまっているからこそ復習するのだろう」という意見もあろうかと思います。しかし違うのです。復習は忘れたからするものではなく,忘れないうちにするものです。そうすることによってこそたいへん効率のよい学習ができますし,それに「以前学習したことをまだちゃんと覚えている」というのは嬉しいものですから,精神的にもこのほうがよいのです。逆に,一度やったことを忘れてしまっていてやり直さなければならない,となると意欲を削がれます。 

 忘れないうちに復習するのですから,その参考書なり問題集なりをひと通り終わらせる終わらせないに関係なく,あるページを学習したら,そのページの復習は必ずあるタイミングで行うのです。「~周する」という考え方がナンセンスであることがお分かりいただけたでしょうか。

 とはいえこの「~周」法には,手っ取り早い・復習法自体のことをあまり考えなくてよいという長所があります。この長所は決して無視できない重要性を持つものだと思いますので,以上述べたような欠点を補いつつこの方法を用いるにはどうすればよいかということも,本稿の最後で述べたいと思います。

優れた復習法spaced rehearsalについて

 というわけで復習はタイミングが命です。では具体的にどのようなタイミングで復習すればよいかということが問題になります。この点を最適化した優れた復習法として,spaced rehearsalスペースト・リハーサルあるいはspaced repetitionスペースト・レペティションと呼ばれるものがあり(以下,spaced rehearsalで統一します),私はこれをほとんどあらゆる学習において用いています。

 何か新しいことを学習したとき,初めはすぐに復習しないと忘れてしまいます。しかし,復習を重ねるごとに,次第に長い間覚えていられるようになってきます。人間の記憶のこのような性質に対応して,spaced rehearsalでは,まずはごく短い復習間隔から始めて,復習したときに学習対象をきちんと覚えていたら次第に復習間隔を広げてゆくようになっています。復習時にきちんと覚えていなかった場合は,改めて短い復習間隔からやり直すことになります。

 最初の復習間隔はごく短く,たとえば10分,場合によっては1分以下などということもあります。ともかくその場で覚えて,余裕があれば夜にもう一度おさらいするとよいのですが,これは気が向けばでかまいません。便宜上,以上の全体をまとめて初回の学習とみなすことにします。

 その後の復習間隔はいろいろありうるのですが,一つだけ必ず復習すべきタイミングがあり,それはこの初回学習の翌日です。2回目の学習(1回目の復習)は初回学習の翌日,これだけは覚えておいてください。これは1日遅れただけでもけっこう学習の効率を下げてしまうことが多いですから,極力守るようにしましょう。

 次の復習のタイミングについては,私はこれまで3つのやり方を見たことがあります。
●2回目の学習(1回目の復習)の3日後
●同,6日後
●同,7日後

 日本で大学受験生をしていたころ(17~18歳)の私は「6日後」に復習していました。2回目の学習の6日後というより,1回目の学習のちょうど1週間後という感覚でした。当時は,「初回学習の1日後,1週間後,1か月後に復習する」という方針(DWM法と呼ばれるものです)をとっていたのです。

 20代の後半でドイツ語学習(特に瞬間独作文)に取り組んでいたときも,初めはそのように(あるいは2回目の学習の7日後復習に)していたのですが,ある時からはもっと慎重に,2回目の学習の「3日後」に3回目の学習をするようになりました。「6日後」や「7日後」でやっていてミスが増えてきたからだったような気もしますが,より確実にきっかけとなったのは,学習心理学の本に次のように書いてあるのを読んだことです。

 学習の後,忘却が生じるが,忘却は徐々に生じるわけではないことがわかっている。忘却は,学習から24時間後,72時間後,そして6~7日後に大きく生じるのである。[……]そういう形で忘却が起こっていくので,復習は,それぞれの忘却直前の24時間後,72時間後,1週間後に行うのが効率的なのである。

岡本浩一『上達の法則 効率のよい努力を科学する』PHP新書,pp. 50-51)

 今この本のこの箇所を見てみますと,「72時間後」というところ(2箇所とも)にだけ線を引いてありまして,これが私にとって新しい情報だったのだということが分かります。なおこの本は全体としても,机上学習のためにも技能の習得(楽器の練習など)のためにも有益なことがいろいろ書いてありますので,お勧めしておきます(本ブログは開設直後につき,まだしばらくAmazonの埋め込みリンクが貼れない状態です。上の引用のところの書名をクリックしてください)。

 その次の復習すなわち4回目の学習は,やはり『上達の法則』の上記引用箇所に従い,3回目の学習の1週間後に行います。

 以上がおそらく最も大切な復習タイミングで,その後どのくらい間隔を空けてゆくかはさまざまでよいと思うのですが,私は「2週間→1か月(4週間)→3ヶ月(13週間)→6ヶ月(26週間)」というのを採用しました。このうち「2週間→1か月」の部分は,hayabusaさんという方のサイトを参考にしたものです。 そもそもspaced rehearsalという概念を知ったのもhayabusaさんのサイトによってでした。このサイト自体は私が探した限りでは残念ながらもう閉鎖されているようなのですが(2019年9月18日現在),ご本人のTwitterアカウント(botですが)は稼働中です。

全部で何回学習するか

 全部で何回学習すればよいかですが,一つの目安として「7回」というものがあります。根拠は分からないのですが,ともかくいろいろなところで「7回学習したことは忘れない」「有効な学習はなぜか7回」といったことを聞きました。レーゲンスブルク大学(音大ではなく総合大学のほう。Universität Regensburg)に少し通っていたとき,普段の勉強の仕方についての一日集中講座があったので受講したのですが,そこでも「(だんだん間隔を空けつつ)7回」と言っていました。

 この「7回学習」をspaced rehearsalと組み合わせると,
1. 初回学習
2. その翌日に復習
3. 2の3日後(1の4日後)に復習
4. 3の1週間後(1の11日後)に復習
5. 4の2週間後(1の25日後)に復習
6. 5の1か月後/4週間後(1の53日後)に復習
7. 6の3か月後/13週間後(1の144日後)に復習
となり,さらに念を入れて(最後の復習間隔が3か月というのはどうも短すぎる気もするので)
8. 7の6か月後/26週間後(1の326日後)に復習
というところまで行うのが私のやり方です。

復習スケジュールの管理はコンピュータに任せるのがよい

 以上のような復習スケジュールは,カレンダーに自分で書いて実行してもよいのですが,書き込む手間がかかります。それに,復習時に学習対象を忘れてしまっていたらもう一度短い復習間隔からやり直すわけですが,その際には以降の復習スケジュールを消して,新しい復習スケジュールをカレンダーに書き込むことになります。

 こうした手間を省くため,復習スケジュールの管理はコンピュータに任せることをお勧めします。私がこの目的で使っているソフトは “Anki” というもので,これはパソコン(Windows, Mac, Linux)にもスマートフォン(iPhone, Android)にも対応しています。iPhone版のみ有料,ほかは無料です。私はAndroid版(”AnkiDroid”)を使っています。

 単語カードのように表面に問題を,裏面に答えを書いて使うのがAnkiの基本的な使い方ですが,既存の教本を使って学習する際の復習スケジュールを管理するのにも用いることができます。この場合,表面に「○○の○ページを復習せよ」と書いておき,裏面には何も書かなければよいのです。

 このとき,初回の学習の際にたとえば一気に10ページ進めたとしても,「11~20ページを復習せよ」というカードを作るのでなく,「11ページを復習せよ」「12ページを復習せよ」というふうに細かく分けたカードにするとよいでしょう。なぜかというと,復習する段階になって「11~20ページを復習せよ」というカードを見たとき,ちょうど疲れていたりすると10ページも復習する気が起きず,その結果全部を放っておいてしまうことになりかねないからです。これに対して,「11ページを復習せよ」「12ページを復習せよ」と細切れになっていれば,そのときできる分だけ復習して,残りは翌日に回す,ということができます。

 それから,こうしてコンピュータで復習スケジュールを管理するようになっても,いつ復習したかの日付の記録は教本に書き残すことをお勧めします。何らかの事情でデータが消えてしまい,復習スケジュールが分からなくなったら,学習効率が落ちるだけでなく意欲も大いに削がれるでしょうから。

 こうして復習していると,大抵の記憶は保持できると思いますが,それでも時々は忘れてしまうものが出てくるでしょう。このとき,1ページにたとえば10題の問題が載っている教本で,そのうち1題だけ正解を忘れてしまっていた,というような場合,そのページ全体をやり直しにすると効率がよくありません。このような場合は,正解を忘れてしまっていた問題そのものを表面に,正解を裏面に入力したAnkiカードを新たに作り,以降,その問題については別個に復習します。教本のほうには,「この問題はAnkiの別カードで復習する(ので,このページ全体の復習のときには飛ばす)」ということが自分で分かるようにメモを残しておきます。

 Ankiで復習してゆくと,学習は7回や8回で自動的に終わりになるわけではなく,そのカードを取り外さない限り,いつまでも復習が繰り返されます。それでかえってよいのではないかと思います。「7回学習したことは忘れない」と言われているとはいえ,100%そうだというわけではないでしょうから。それに,9回目,10回目ともなってくると復習間隔は年単位になりますから,それほど気にならないでしょう。それでも気になったら,どこかの時点でカードを外してしまえばよいのです。

もっと単純な方法で復習したい方のために:「~周」法・改

 Spaced rehearsalがいかに優れた方法でも,何らかの事情でAnkiを使いたくないという方はいらっしゃるかもしれません。そして手動で復習スケジュールを管理するのはちょっと面倒だ,システムが複雑すぎる,とお思いになる方がいらしても仕方がありません。この管理の面倒さ・複雑さはspaced rehearsalの短所といえば短所です。

 そこで,特に復習スケジュールの管理作業をしなくてもできる方法として,本稿のはじめでいったん否定した「~周する」というやり方を,ただし一味加えて採用することを提案します。どのように一味加えるかというと,「前日初めて学習した分だけは必ず復習する」というこの一点です。先ほども述べたように,「初回の学習の翌日」というのは本当に重要な復習タイミングですので,これだけは残すのです。あとは特に何も考えずにその参考書なり問題集なりを進めてゆき,終わりまでいったらまた初めに戻ります。実はこれは,大学入試に向けた勉強を始めたころの私のやり方でもありました。

 しかしこれだとどうしても,2回目の学習後に間が空きすぎる場合が多いので,忘却が少なからず生じてしまいます(それでもこの「初回学習の翌日の復習」をしない場合とは雲泥の差なのですが)。これをある程度防ぐためには,1冊の参考書なり問題集なりを通して学習するのでなく,何部かにあらかじめ分けて,各部ごとに2周ないし3周し,そうしてから本全体をもう1~3周程度するとよいでしょう。森沢洋介さんが「英語上達完全マップ」の中でおっしゃっている「セグメント分割」にあたる方法です。どのくらいに分けるかですが,各部を1週間以内に1周できる程度のサイズにするとよいはずです。理由は上のspaced rehearsalの解説をお読みになればお分かりいただけるかと思います。

 「各部を1週間以内に1周できる程度のサイズにする」ことを行えば,だいたいの記憶は保持できると思いますが,それでも復習の段階で忘れてしまっていたことは,ノートに書き出しておいて何度も読み返すとよいでしょう(私自身,大学入試に向けて勉強していたころはそうしていました)。これは科目で分けることなく,何でも1冊のノートに書いてしまったほうが,まとめて読み返すのに便利です。

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